Hong Kong Independent Film Festival 2021
2021年 香港インディペンデント映画祭
京都出町座では、通常プログラム[上映作品1]のほか、下記の長編5本・短編2本を加えた、計25作品を一挙上映致します
H 憂いを帯びた人々|憂憂愁愁的走了|Leaving in Sorrow
中国返還にともなう香港人の心境の変化を描いた本作は、香港・北京・深セン・サンフランシスコを舞台に、信仰を失った牧師、希望を持てない無気力な若者、過去の傷を背負った雑誌編集者に焦点を当てた群像劇である。香港インディペンデント映画の旗手ヴィセント・チュイ監督の劇映画長篇デビュー作。映画を撮りながら、香港インディペンデント映画の総本山「影意志」を主宰しインディペンデント映画の上映・配給・制作を精力的におこない、今や香港インディペンデント映画シーンに欠かせない人物だ。
本作は香港を代表するスターで日本でも知られる「恋の紫煙」のショーン・ユー(余文楽)の主演デビュー作でもある。ラース・フォン・トリアーの「ドグマ95」運動に応じて、全編ロケーション撮影、手持ちカメラ、照明なしなどのルールに従って制作された香港では最初の「ドグマ映画」である。
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【2001年/90分/カラー/広東語・中国語・英語】
監督▶ヴィンセント・チュイ Vincent Chui 脚本▶パトリック・コン 出演▶ショーン・ユー,アイビー・ホー,トニー・ホー
I 狭き門から入れ|三條窄路|Three Narrow Gates
返還から10年を経た香港が舞台。中国政府が約束した「一国二制度」は果たして維持されているのか。警察、新聞記者、牧師という接点を持たない3人が弁護士殺人事件を通じて繋がり、中国官僚と香港不動産企業が癒着し利権を得たスキャンダルを暴いていく。真相への門が益々狭くなっていくこの時勢、果たして彼らは自分の正義を貫くことができるだろうか?
ヴィンセント・チュイ監督は、商業映画ではタブーとされる香港と中国の抱える矛盾や政治の陰謀を描くと同時に、第一級のクライムサスペンスとしても成功している。過去2度の香港アカデミー賞助演男優賞に輝くリウ・カイチー(廖啓智)が主役の牧師を熱演する。そのほか、日本でもよく知られる中国のドキュメンタリー映画監督ドゥ・ハイビンがスキャンダルの鍵を握る中国警察役を好演している点も見逃すことができない。
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【2008年/105分/カラー/広東語】
監督▶ヴィンセント・チュイ Vincent Chui 脚本▶グレース・マック 出演▶リウ・カイチー,ジョーマン・チャン,ドゥ・ハイビン
J 哭き女(なきおんな)|哭喪女|Keening Woman
香港実験映画の第一人者であるリタ・ホイ監督の劇映画長篇第2作。2013年釜山国際映画祭で上映された際には、韓国の鬼才監督キム・ギドクに絶賛された。
死んだ親戚の通夜を経験した後、自身が持っていない記憶やアイデンティティの間をさまよいながら、異常行為を繰り返すヒロイン。葬儀の時に遺族の代わりに故人を悼み「悲しみ」などの気持を表現する「哭き女」を主人公としたこの不思議な物語は香港の過去・現在・未来を寓意的に描くホラー映像詩だ。
実験的なスタイルとジャンル映画を融合し、インディペンデント映画でもなく商業映画でもない、従来の香港映画のイメージを打ち破るこの美しい作品からは、香港という都会への愛が画面の隅々からにじみ出ている。映画の終盤に響き渡るテーマソング「さよなら、香港」(作:黄衍仁)を聞けば、誰でも瞬時にそう感じるに違いない。
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【2013年/115分/カラー/広東語】
監督・脚本▶リタ・ホイ Rita Hui
主演▶ミシェール・ワイ,ミツイ・ハナ
K 河の流れ 時の流れ|河上變村|Flowing Stories
商業映画界でも知られた女性監督、ツァン・ツイシャンによる、自身が生まれ育った村の過去・現在・未来を複数の家族のストーリーを通じて多面的に描いたドキュメンタリー。舞台となる村からフランス、イギリスへと移民した家族の映像は、香港のとある村の近代史、世界との関係を野心的に構築し、過去100年に渡る香港社会の縮図を浮き彫りにしている。
編集を手掛けたのは長年エリック・ロメールの映画の編集に従事している香港人メアリー・スティーブン。河瀬直美監督の「萌の朱雀」「殯の森」の映画音楽を手掛けた茂野雅道がこの映画のために作ったオリジナル曲は、香港の近代史の変遷にうまくマッチしている。劇場公開当時、香港の本土意識の高まりとともに大きな反響を巻き起こし、ドキュメンタリー映画としては異例のロングラン上映、記録的なヒットとなった。
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【2014年/102分/カラー/広東語・客家語・フランス語など】
監督▶ツァン・ツイシャン Jessey Tsang
編集▶メアリー・スティーブン
音楽▶︎茂茂野雅道
L アウト・オブ・フレーム|片甲不留|Out of Frame
北京近郊の芸術村「宋莊」は、政府にとって不都合な絵の展覧会やインディペンデント映画祭やパフォーミングアートなどを開催したという理由で、常に当局の監視下に置かれていた。本作はその実在の芸術村をモデルにしている。政府に封殺される画家が自身の血で創作を続け、公安の暴力に対抗する。監視、監禁され、精神的にも追い詰められた彼はある“取り返しのつかない決断”をする……。
実際、2014年に雨傘運動が起きた直後、「宋莊」の芸術家たちは連帯声明を出して学生たちを支援したが、直後に公安に逮捕され半年以上の刑罰を科された。この映画が完成した現在でも、拘束されたままの芸術家がまだいるのだ。監督は過去ベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭などにも出品の経験があるウィリアム・クォック。本作から読み取れるのは、香港の自由な創作環境もいずれは中国のようになると恐れる監督の視点である。
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【2015年/95分/カラー/中国語】
監督▶ウィリアム・クォック William Kwok Wai-Lun
M 香港映画傑作短編集
[2作品/計51分]
九月二十八日・晴れ|a Sunny day
日本でもよく知られる中国インディペンデント映画監督、イン・リャン(応亮)が香港亡命後初めてメガホンを取った短編。タイトルにある九月二十八日は雨傘運動が起きた日でもある。雨傘運動が勃発した当日、映画配給会社に勤める女性がまもなく老人ホームに入る父親に会いに行く……。父親役には香港アカデミー賞前会長、ジョー・チョン(張同祖)。本作は2016年台湾アカデミー賞の最優秀短編賞を授賞した。
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【2016年/25分/カラー/広東語】
監督・脚本▶イン・リャンYing Liang 撮影▶大塚龍治
主演▶ジョー・チョン、アイビー・パン
表象および意志としての雨|作為雨水:表象及意志|Being Rain: Representation and Will
香港の社会運動を撮影していた映像制作チームは、ある謎の組織が人工的に天候を操作し、民衆のデモへの参加意欲を損なおうとしていることにきづく。彼らは組織の場所を突き止め、潜入を試みるが……。「乱世備忘」の監督でもあるチャン・ジーウンが、ジョニー・トー主宰の新人監督発掘コンペティション「鮮浪潮」で助成金を得て制作。本作はフェイクドキュメンタリーである。
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【2015年/26分/カラー/広東語】
監督▶チャン・ジーウン Chan Tze Woon